Home > 研究紹介 > 胆管の管腔形成の制御メカニズム

胆管の管腔形成の制御メカニズム

胆管上皮細胞が形成する胆管は、腎臓、肺など他の臓器にも広く見られる管状の構造(チューブ構造)である。チューブ構造は、管腔を伴った構造であり、管腔の形成不全や異常な拡張は、重篤な疾患を引き起こすことが知られている。我々は、細胞外基質のラミニンや胆管上皮細胞特異的な転写因子Grhl2が管腔形成やそのサイズの調節に重要であることを明らかにしてきた。胆管形成を制御する分子間の相互作用を明らかにすることで、上皮組織の管腔形成を制御する共通の分子メカニズムを明らかにすることを目指して研究を行っている。

 

 肺、膵臓、肝臓、腎臓など固形臓器は、極性を持った上皮細胞によって構成されている。器官形成の過程では、発生初期の多分可能を持った未熟な細胞(胎生幹細胞)から種々の構成細胞が分化し、血管内皮細胞や線維芽細胞とも相互作用しながら3次元的な組織構造を形成する。一方で、成体の成熟した臓器が機能を維持するためには、古い細胞が新しい細胞に置換される必要があるので、恒常的に構成細胞を供給するシステムが備わっている。成体の幹細胞システムのうちで最も研究が進んでいる造血系では、造血幹細胞から分化方向が限定された前駆細胞を経て種々の細胞へと分化する細胞系譜が明らかになっている。固形臓器でも組織幹細胞から細胞が供給されると仮定され、小腸ではcryptに存在する組織幹細胞から構成細胞が供給されることが証明されている。肝臓でも組織幹細胞の存在が報告されている(図1左)。一方で、分化した細胞がゆっくりと分裂を繰り返すことで、細胞量が維持されている、あるいは、分化方向が限定された前駆細胞が存在し、細胞を供給している可能性も考えられる。

(図1右)

 我々は、肝臓の幹細胞システムを明らかにするために、肝幹細胞や前駆細胞(小型肝細胞)を分離同定し、それらの細胞の性状を明らかにするとともに、幹・前駆細胞が3次元的な組織構造を形成する過程を明らかにしたいと考えている。

そのために、

  1. 表面マーカーの発現を指標にしてFACSを用いて前駆細胞および幹細胞を分離する
  2. In vitroコロニーアッセイを行い、細胞の分化能を明らかにする
  3. 3次元培養を用いて幹細胞から組織構造が形成される過程を明らかにする

などの研究を行っている。

  1. Tanimizu N, Miyajima A, Mostov K. Liver progenitor cells fold up a cell monolayer into a double-layered structure during tubular morphogenesis.  Mol. Biol. Cell 20, 2486-2494 (2009)
  2. Tanimizu N, Miyajima A, Mostov K. Liver progenitor cells develop cholangiocyte-type epithelial polarity in three dimensional culture.  Mol. Biol. Cell 18, 1472-1479 (2007)
  3. Tanimizu N, Kikkawa Y, Mitaka T, Miyajima A. alpha1- and alpha5-containing laminins regulate the development of bile ducts via beta1-intergrin signals. J Biol Chem, 287(34): 28586-28597 (2012)
  4. Senga K, Mostov K, Mitaka T, Miyajima A, Tanimizu N. Grhl2 regulates epithelial morphogenesis by establishing functional tight junctions through the organization of a molecular network among claudin3, claudin4, and Rab25. Mol Biol Cell, 23(15):2845-2855 (2012)