(2)ラット小型肝細胞による類肝組織形成
小型肝細胞の培養を長期に行うと、盛り上がり組織化した小型肝細胞は、2,3細胞の厚さからなる索状構造をコロニーの上に作り、コロニーの外側に突起状に伸びていく。右図は、培養84日目に見られた小型肝細胞コロニーで、突起状に伸長していることがよくわかる。突起の伸長方向に一定の傾向はない。
図1. 肝小葉構造模式図と培養皿状に形成された類肝組織から突起状(索状)に伸張する小型肝細胞。肝細胞策と相似していることが分かる。
培養皿上に形成される索状構造は、2,3細胞の厚さからなり細胞間に毛細胆管様構造が見られる。毛細胆管様構造は、収縮と拡張を繰り返し、胆汁の運搬を行っていることがわかる( 肝臓の再生―組織化と毛細胆管形成を参照)。
図2. 組織化した小型肝細胞はコロニーから突起状に伸張する。2〜4細胞の厚さで中央に毛細胆管様構造が見られる。
播種した細胞の中には、小型肝細胞ばかりではなく、星細胞、肝上皮様細胞、クッパ-細胞、類洞内皮細胞など存在する。類洞内皮細胞は増殖せず、1週間以内でほぼ全て消失する。小型肝細胞は増殖しコロニーを形成する一方、肝上皮様細胞や星細胞も増殖する。2週間ほど培養すると、肝上皮様細胞や星細胞は小型肝細胞コロニーと接触し、それらの細胞はコロニーの下に潜り込む。星細胞は4型コラーゲンやラミニンなどの細胞外基質を分泌し、小型肝細胞の基底側に蓄積する。基底膜様構造が形成されるにつれ小型肝細胞は大型化し、成熟する。
図3.小型肝細胞と肝非実質細胞による類肝組織形成過程の模式図。
(Mitaka T et al, Hepatology, 1999)
- Mitaka T, Sato F, Mizuguchi T, Yokono T, Mochizuki Y. Reconstruction of hepatic organoid by rat small hepatocytes and hepatic nonparenchymal cells. Hepatology, 29(1), 111-125 (1999)
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