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(2)小型肝細胞
(2)-2 小型肝細胞の増殖

小型肝細胞の増殖には、nicotinamideが必須である。type I collagenなどを塗布した培養皿上で培養する場合は血清が必要であり、メーカーやLotを選ぶ。HAを塗布した培養皿上では、無血清培養が可能である。
(Chen Q et al, Nature Protocol, 2007)

小型肝細胞の増殖に必要な因子

(Mitaka T, et al. BBRC, 2011)

小型肝細胞は、成熟肝細胞と小型という点を除けば形態学的に類似している。しかしながら、その増殖能は明らかに異なる。その違いを分子レベルで明らかにするために網羅的遺伝子解析を行った。

図1

図1. 成熟肝細胞(MH)と10日間培養した小型肝細胞(SH)からmRNAを抽出しGeneChip (Agilent)にて解析した。

図2

図2. Activin分子種の遺伝子とタンパク質の関係。Follistatin/Activinの作用機序。

図3

図3. RT-PCR (1A)及びRealtime-PCR (1B)でfollistatinとinhibin, activin receptor遺伝子発現を解析した。
(Ooe H et al, J Cell Physiol, 2012)

GeneChipの解析結果より、小型肝細胞は、Follistatin (Fst)とActivin B (Inhibin bBの2量体)を特異的に発現していた。Realtime-PCRの結果から培養経過に伴い両遺伝子の発現が増えていることがわかる。Activin receptorの発現は、小型肝細胞と成熟肝細胞に違いはない。

図4

図4. 小型肝細胞のFollistatin (Fst)の分泌。培養経過に伴い増加するが1週間を過ぎると徐々に減少する。
(Ooe H et al, J Cell Physiol, 2012)

FstはTGFb familyタンパクであるActivin b subunitと結合することにより、Activin Aの受容体活性化を阻害し、Activin Aの増殖抑制活性を抑制する。

また抗Fst抗体を培養液中に加えて中和すると、小型肝細胞の増殖は抑制される。また小型肝細胞は、Activin Bによる増殖抑制を受ける。

図5

図5. 抗Follistatin中和抗体を培養液に加えて小型肝細胞の増殖抑制効果をみた。
(Ooe H et al, J Cell Physiol, 2012)

図6

図6. Follistatin遺伝子に対するshRNAをlentivirusを用いてラット小型肝細胞に導入すると、小型肝細胞コロニーの拡大が抑えられる。

  1. 成熟肝細胞の増殖は、非実質細胞から分泌されるTGFβと肝細胞自ら産生するActivin Aによって抑制される。
  2. 小型肝細胞が産生するFollistatinは、Activin Aと強く結合することにより、Activin receptorとの結合を阻害する。その結果、周囲の肝細胞が分泌するActivin Aや自ら分泌するActivin Bの働きが阻害され、小型肝細胞はHGFや自ら産生するTGFαにより増殖する。
  1. Mitaka T, Kojima T, Mizuguchi T, Mochizuki Y. Growth and Maturation of Small Hepatocytes Isolated from Adult Rat Liver. Biochem. Biophys. Res. Commun., 214(2), 310-317 (1995)
  2. Mitaka T, Sato F, Mizuguchi T, Yokono T, Mochizuki Y. Reconstruction of hepatic organoid by rat small hepatocytes and hepatic nonparenchymal cells. Hepatology, 29(1), 111-125 (1999)?
  3. Ooe H, Chen Q, Kon J, Sasaki K, Miyoshi H, Ichinohe N, Tanimizu N, Mitaka T. Proliferation of rat small hepatocytes depends on follistatin expression. J Cell Physiol, 227(6): 2363-2370 (2012)