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肝臓は、大人の男性で約1400g、女性で約1200gの大きな臓器です。細胞がびっしり詰まった臓器で、その細胞の約80%は肝細胞からなります。他には胆汁を運ぶ胆管を作っている胆管上皮細胞や血管を作っている細胞、免疫に関係した細胞などからなります。肝臓の機能のほとんどは肝細胞が担っています。例えば、アルブミンなどの血清タンパク質のほとんどは、血中から取り入れたアミノ酸を利用して肝細胞が合成しています(免疫グロブリンはB細胞が作っています)。血中の過剰なブドウ糖をグリコーゲンとして貯蔵し、また低血糖時に分解してブドウ糖を供給します。コレステロールの合成や胆汁の分泌、アルコールや薬などの無毒化も全て肝細胞が行っています。赤血球の分解産物であるビリルビンは、そのままでは脂肪に融けやすいので細胞に対して毒性を持ちますが、水に溶けやすくして無毒化するのも肝細胞の仕事です。肝臓が悪くなると黄疸(高ビリルビン血症)になるのは肝細胞が働かなくなるからです。私たちは、働かなくなった肝細胞を元気にする方法や新しい細胞と取り替える方法を研究することで肝臓病の新たな治療方法を見つけようと考えています。

肝細胞と胆管細胞は胎児の時に同じ細胞から分かれて増えます。その元になる細胞を肝前駆細胞というのですが、私達はその肝前駆細胞の一つである小型肝細胞を発見しました。小型肝細胞はよく増える細胞というだけでなく、分化して普通の機能的な肝細胞になることができます。これまでは、普通の肝細胞の凍結保存は難しかったのですが、この小型肝細胞は凍結保存もできて元に戻せば同じように増えます。また小型肝細胞は、コラーゲンやラミニンのような細胞外基質を作る細胞と一緒に培養すると培養皿の中に肉眼でやっと見えるぐらいの大きさですが、小さな肝組織を作ることができます。その組織の中には胆汁を通す細い管もできています。

今はまだ血管を組み合わせて血液を供給する事はできませんが、培養皿の中で薬を分解させたり、胆汁を作らせたりすることはできるようになりました。私たちの研究の最終目標は、肝細胞を増やしたり肝臓(組織)を体外で作って移植し、病気の肝臓(組織)と取り換えて治療することです。

胎児(仔)の時にどのような仕組みで肝臓が作られていくかについても調べています。発生の過程を再現すれば、肝臓を作ることができるのではないと考えています。また、肝臓病になった時に肝細胞がどのように増えるのか、肝臓にいる肝前駆細胞を目覚めさせ活性化するにはどうしたら良いか、肝細胞を移植して肝臓病を治すことができるかなどの研究も行っています。